電話に出た神父は、美咲の能力とは無限にある能力であって科学的物理的には証明はできない、稀に見る能力である事を知らせた。
そして、経験豊富で専門的知識のあ臨床心理士は、美咲の様な子供をカウンセリングをした事があるようだった。
さらに神父は電話を受ける。
経験豊富であるフリーの精神科医での判断は科学的根拠がない為、一人の精神科医では判断してはならないという理由で、もう一人専門の病院の精神科医は美咲の絵画を見せてもらいたいという。
そして、美咲に一度会って見たいという事だった。
神父は、是非、会ってもらいたいと伝える。
美咲は、年1回の誕生日だけ外出するが、施設から一歩も外に出ることはない、声かけしても返事すらする事もない。
精神科医と臨床心理士によって、良い治療ができ、専門の医師であれば、神父は美咲が変ってくれるかもしれないと思っていた。
数日後、医師と臨床心理士の方が施設へ来たのだが、美咲は、いつも通り、部屋へ閉じこもったまま、静かに絵を描くだけだった。
まず、セラピストが声をかけてみる、次に臨床心理士が声をかけてみるが、ただ絵画に集中し没頭していた。
美咲を見ながら声をかけると、セラピストと臨床心理士は不思議と自分が美咲の部屋にいるという意識が薄らいでいくのを感じていた。
セラピストと臨床心理士は、同じ感覚で心の中で思い見つめ合った。
「私達は、ここには居ないの、この子を見ている私自身の存在が薄れていくようだ」
セラピストと臨床心理士の「魂」が消えたり薄らと見え隠れしていたのだ。
そして、身体の力が抜けていく のを感じ、その場から離れた。
「先生、私達には無理です、声をかける事はしましたが、それ以外の事は全く出来ません」
セラピストと臨床心理士の報告を受けた病院の精神科医は、これまでの気になる絵を見せてもらえるよう神父に言った。
神父は、スケッチブックを2冊をもって、病院の精神科医と経験豊富な臨床心理士のもとへ向かう。
「何という絵なんだ、まだ幼い子が描く絵ではない、何故だ信じられない」
「私にも信じられませんが、何かを訴えているような感覚になります」
病院の精神科医と臨床心理士は、現実のもののように鮮明に描かれている絵を見て驚きを隠せなかった。
長く接していたセラピストから美咲の事を聞いていた臨床心理士は、精神科医へ言った。
「私は、もうあの部屋にはいけません、あの部屋に入ると何故か力が抜けるような感じがして」
「そんな事が、あるはずがないだろ、一般的な症状を持つ幼い子供だろ」
精神科医師は、ゆっくり美咲のもとへ行き、声をかけた。
「こんにちは、君の名前は、美咲さんと言ったね、君の描く絵は現実にあるものではないのかな」
精神科医の言葉は、美咲の絵を描く手を止めさせ、美咲は、顔を医師に向ける。