つくしはその言葉に頷いていた。
決して気が重いというわけではないが、この旅が二人の親友の興味を惹いたのは間違いなかった。道明寺司とサンフランシスコ
康泰 澳門 まで行ってくる、勿論仕事で。と、伝えたときの二人は、そのことが人生の一大事だと言わんばかりに興奮していた。
滋はつくしの手をギュッと握った。
つくし。いい?これは凄いことなんだからね?仕事絡みとはいえ、あの司が女を誘って旅に出るなんてこと、今の今まで無かったことなんだからね!逃げようなんて思わず、きちんと話をしなさいよ?仕事を口実にしてまであんたと居たいって凄いじゃない!あいつ、つくしのことが本当に気に入ってるんだと思う。だから仕事仕事ばかり言わないで少しはあの男のことを理解してあげてよ?このあたしが保障するんだから。ね?つくし。前にも言ったけどあいつ色々と誤解されやすい男なの。それにあの男はああ見えて執念深い、じゃない、執着心が強い男だから逃げられないわよ?それにあたしは食らい付いたら離さないスッポンよ?あたしから逃げようなんて思わないでね」
あの男から逃げるなというなら意味が分かる。
だが滋から逃げるなという意味がわからない。
そうですよ!先輩!こんなチャンス二度とないんですからね!ピットブル(犬)並に歯を食いしばって下さい!」
おまけに怪気炎を上げる桜
搬屋子。いや。何をチャンスだと言っているのか意味がわからない。
おい。牧野つくし。何をそんなに悩んでいるんだ?」
向かい合わせに座る男は低い声でずばりと聞いてきた。
つくしはこの出張が無事に終わりますようにと祈っていた。クライアントに同行することになった旅は豪華なプライベートジェットでの旅だ。個人的なことを除けばこの男はビジネス界の大物だ。そんな男に同行することが名誉なことだと思える人間は多いはずだとわかっている。紺野だってどうして僕は一緒に行けないんですか。 と羨ましがった。
別に悩んでいません」
嘘つけ。おまえは何か考え事があるときは眉間に皺が刻まれる」
そ、そんなことありません」